【インタビュー】現役のカーデザイナーに会ってきた!ー池田聡さんの場合ー


昨日はカースタイリング復刊号の発売日でした。

皆さんぜひ書店にてお手に取っていただければと思います。

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ロゴも一新されてます!

 

さて、今回は米山知良さんから紹介いただいた若手デザイナーの池田聡さんです。

自動車メーカーの期間従業員をご経験されてから、カーデザイナーになったという異色の経歴の持ち主です。

 

是非、皆さんにも読んで頂きたい貴重な内容となっております。

 

 

現役のカーデザイナーに会ってきた!―池田聡さんの場合―

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池田聡=1984年5月11日、大阪府和泉市に生まれる。高校は公立の普通科に通い、その後美術大学への進学を希望するも叶わず期間従業員として愛知県の工場で進学費用を貯める。その後、美大受験予備校で1年を過ごし、京都5美大のうちの一つである京都精華大学プロダクトデザイン学科に進学。冬のインターンで某国内自動車メーカーから内定を獲得し、就職。現在は先行開発を担当し、企画からデザインまで一貫して手掛ける若手デザイナーとして注目を集めている。仕事前に海に行くほどのサーフ好きでもある。

 

昔から美術と体育が好きな子どもでした。

何か描いたり、何か作ったり、ということに純粋に興味があるのです。

最近もDIYで色々作っています。

猫を飼いだしたので、キャットタワーを自作すると火がつき、そこから色々と作っています。

 

昔からとにかく美術が好きで、自分でいうのもなんですが、クラスの中にいる絵の得意な奴という感じだったと思います。

将来は何か作ったりする仕事に就きたい、とうっすら考えていたのだと思いますが、若かったのでとくに深くは考えていなかったように思います。

 

高校3年生になってはじめて進路のことを考えた時に、美大に行きたいと思いました。

3年の夏に、美大受験予備校の体験コースに行き、そこで本気で目指そうと思いました。

 

高校になると美術の授業すらなくなり、美術部でも無かったので、志高く練習していたわけでもありませんでした。

また、中学はバスケット、高校はハンドボールにデリバリー系のバイトをしていて、ほとんど描いていなかったので今の実力では無理なことは承知していました。

 

予備校に通いたかったのですが、その段取りもうまくいかず、予備校に行くお金を貯めようと思い、高校卒業してすぐ、某メーカーさんの自動車工場で1年間だけ期間従業員として働きました。

 

僕が担当したのは鋳造なので、結構キツいと言われているパートです。

工場で働く人は、色んな人たちがいました。

農家をしている出稼ぎの人もいれば、リストラされて家族を食べさせなければならず働きに来ている人や、バックパッカーから元社長の人までほんとに様々な人がいました。

ここでは言えないような、ワケありの人もいました。

 

色んな人と過ごせたことは、たくさんの考え方も知ることができ、良かったと思っています。

働いていると、社員登用試験を受けて、そのまま働く道もでてきました。

正直、とても迷いました。当時は給料も良かったので。

 

ですが、チャレンジしないと絶対後悔するのだろうな、と思い、それだけは絶対にイヤだとも思いました。

その仕事はきっちり1年で辞め、カーデザイナーを目指そうと決めたのもちょうどその時でした。

失敗したらトラックに乗ったり、体を使って稼ぐ仕事をしたりすればいいだろうと思い、それで腹が決まりました。

 

そこから1年間予備校に通い、京都精華大学に入学する事が出来ました。

大学に入った時は、カーデザインやるぞ、と鼻息荒い感じだったのですが、入ってからは色んなことに興味が出てきました。

そもそもプロダクトデザイン学科だったので、クルマの授業は大学2年生の頃から1年間、週1しかありません。

そのかわり、家電だったり建築を目指している人だったり、色んなジャンルの人間がいるので、せっかくだからクルマ以外のこともたくさん勉強しておこうと思いました。

 

もうお亡くなりになられましたが、恩師に出会えたことも大きく影響しています。

 

その教えてくれた方は、考え方や表現がとても極端な方でしたが、本質を教えてもらいました。

流行のスタイリングや造形には全く興味が無い人で、細かいことはどうでもいいって言い切っちゃうような方です。

つまり「スタイリングや細かな所作ばかり気にしていると、本質を見落としてしまうぞ」という事を、伝えてくれたのだと思います。

そのプロダクトにとっての幹はなんなのか・・・想いといいますか、メッセージ性というか、そのために造形するのであって、造形の為の造形はやってはいけない、と。

今でもデザインの基本として常に心がけています。

 

 

そしてカーデザイナーに

どうやってカーデザイナーになるのか、普通の人はあまりご存知ないのではないでしょうか。

教授から、どこどこのメーカーのインターンがあるから、と教えてもらうのです。課題を提出し、メーカーの中で選考が行われて参加できるかどうかが決まります。

3回生の時に、はじめてサマーインターンに参加することができたのですが、レベル的には「俺なんか全然…」という感じでした。

みんな積み重ねでうまくなってきているので、そんな1日2日で勝てるものではありません。

自分の強みはなんだろう、ということはとても考えましたが、自信を持って言えるものが思いつかず、だからこそ「自分のこんなところやあんなところをもっと伸ばしたい」という点を強く意識しました。

 

 

またインターンは、情報収集の意味でも役に立ちました。

他の学生のアウトプットも見られるので、なにより自分への刺激になりました。

 

―そこから内定を獲得できるレベルまで持っていかれたわけですが、どのような練習をされていたのでしょうか。

カースケッチのスキル的なものは、ひたすらスケッチして、という感じです。

コンセプトの立て方などは、基本の部分は大学のプロダクトデザインの授業で学んでいたのでそれが生きたのか、とも思います。

学生なりの面白いアウトプットというものがあるではないですか。

「おれはこれが面白いと思う!」というモノを素直にやりきればいいと思うのです。

「そのやり方でいいんだ!」と思えたのもインターンのおかげです。

 

 

―池田さんはなぜ採用された、とご自身ではお思いになられますか。

難しい質問ですね。

もちろんはっきりとは分かりませんが…今、当時を振り返り、少しだけ感じることがあります。

学生は「良い作品を出そう!」ということばかりを考えているものだと思います。

しかしながら、よく考えてみると、クルマというのは大きなプロダクトで、部品点数も多いので、自分一人で作るわけではなくて、周りと協力してつくり上げるものです。

人がいっぱいいて会社。

そうなると、本当にこいつと一緒に働きたいか、という目線が出てきてもおかしくないと思うのです。

 

もちろん良い作品を作れる力も大事ですが、採用する側も人間ですから、そこだけ見ているわけでは無いのではないのかなと思います。

その人の可能性をどこまで感じてもらえるかという問題だと思います。

自分でいうのも何なのですが、大学行く前に少し働いていたことや、少しだけ特殊で人生遠回りをしている分、可能性を感じてくれたのではないかと思っています。

当たり前ですが、会社には色んな人がいます。

スタープレーヤーみたいな人もいるし、賢くてなんでもデキる人もいます。

表には出てきませんが、地味に見えるようなことをコツコツやって、周りから絶大な信頼を得ている人もいます。

カーデザイナーだから、こうじゃないとダメっていうことは、僕は無いと思うのです。

その人の持っている色んな可能性が生きてくる仕事だなぁ、と感じる場面が多々あります。

 

正解のカタチは一つではありません。 

回り道は無駄にはならないですし、なんらかの形で返ってきます。

 

自分で自分の可能性を決めつけないようにしたほうがいいのではないかと思います。

 

 

カーデザイナーという仕事

1台開発するのに時間もお金もかかります。

たくさんの人が関わっています。

ですので、そうやって作っていって発表されたときの喜びはひとしおです。

「やっとでたんやーっ」と。

 

そして、こういう人に乗って欲しい、こうやって使って欲しいということを考えながら、ああでもないこうでもないとデザインしたものが、届くべき人のもとへ届きます。

 

便利な道具としてや可愛いクルマだな、と人によって各々の形で愛されます。

それがこの仕事の究極の魅力だと思います。

 

僕は今、先行開発をさせてもらっていて、企画からやっています。

企画から入っていくと、車の使い方も含め、そもそも論から入っていきます。

造形にもコンセプトがあり、それはそれで魅力なのですが、今任せてもらっていることには大きなやりがいを感じています。

 

カーデザイナーを目指している人たちへのメッセージ

スキル的なことは、日々精進してください。

僕の時代にはありませんでしたが、今ならCar Design Academyもあります。

これは自分にも言えることですが、自分の強みを何にしていくか、それを常に探していかないといけません。

なにかプロダクトを作るとなったときに、大事なのが芯に通っている想いです。

そこをしっかり持っていないと、オモテだけいくらデコレーションしても響きません。

 

コンセプトを作らなければいけないから作る。アイデアを出さなければいけないから出す。

それだと、作られたもの、作られた想いになってしまいます。

「おれはこう思うんだ!」という思いをしっかり持ってデザインできることは、とても強いことだと思います。

 

こんなことをいうと逆説的になってしまいますが、我が強いだけでもダメなのです。

我と柔軟性のバランスが良いということも大事です。

 

周りの意見を聞かない、取り入れない、となると成長もできず良い物はつくれません。

俺はこう思う、という我が強い上に、建設的な意見の交換ができてこそ、ブラッシュアップできます。

そんな意識を持ってやっていくといいのではないでしょうか。

 

 

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一緒にサーフィンに行った後に今回のインタビューをしたのですが、この後、ひょんなことからとある大物と出会うことに。インタビューも敢行してきましたので、近いうちに公開させていただきます。

 

編集後記

写真ではクールに見える池田さんですが、とてもフランクな方でした。

しかしその内には、熱い想いを持たれていることが垣間見えたインタビューでした。

 

余談になりますが、ねこを飼いだしたということでその理由を聞いてみると「雨の日に高速に乗っていたら、サービスエリアで捨てられていた猫がいたんでほっとけずに…」と答えてくださいました。

今どきそのような行動にうつせる現代人はあまり多くないのではないか、と思うのと同時に、写真の印象とは異なる池田さんのお人柄が伺えるエピソードではないでしょうか。

これからのご活躍がとても楽しみな若手デザイナーの池田さんに、今後も注目しております。

 

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